にじが丘動物病院

本当に怖い!狂犬病

掲載日2011.06.22

2006年11月に京都市の60代男性が狂犬病で死亡というショッキングな報道がありました。国内での死者は1970年にネパールで犬に咬まれて死亡した事例以来のことです。今回の死亡例もフィリピン滞在中に、犬に咬まれた事が原因となっています。国内での感染は人で1955年、動物で1958年以降発生していませんが、日本、英国、スカンジナビア半島の国々など一部の地域を除いて、狂犬病は全世界に分布しているのです。
世界保健機構(WHO)によると、狂犬病による死亡者の数は年4万~5万人との事です。
発症すれば100%死亡する恐ろしい病気です。狂犬病の流行地域に渡航されるかたは、十分注意をしてください。
 
症状は?
潜伏期間は人で7年間の例も報告されていますが、一般的には1~2ヶ月です。症状は、人では発熱、頭痛、全身倦怠、嘔吐などが始まり、次第に筋肉の緊張、幻覚、けいれん、嚥下困難などが起きます。犬ではむやみに歩き回り、柱などに噛み付いたり、狼のような遠吠えをするなどの異常行動をとります。最終的には人でも犬でも全身麻痺が起こり、昏睡状態になって死亡します。
 
世界での発生状況
全世界で発生しており、アメリカやヨーロッパ諸国も狂犬病の発生地域となる。逆に狂犬病が発生していない国は、日本、台湾、アイスランド、アイルランド、スウェーデン、ノルウェー、英国(グレートブリテン及び北アイルランド)、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー諸島、ハワイ諸島、グアム、12の国と地域のみしか狂犬病を撲滅できていないのが現状です。
 
何から感染するのか?
犬から感染することが多いため「犬」とついていますが、犬以外の哺乳動物からも感染します。北米ではアライグマ、スカンク、キツネ、食虫コウモリ、ヨーロッパではキツネ、アフリカではジャッカルやマングースなどから感染します。
                         
地域
狂犬病危険動物種
アジア
イヌ、ネコ
北米
コウモリ、アライグマ、スカンク、キツネ
ヨーロッパ
キツネ
中南米
イヌ、コウモリ、コヨーテ、ネコ
アフリカ
イヌ、マングース、ジャッカル、ネコ
 
予防方法
 野生動物に手をださない
日本での狂犬病の発生が久しく、ついつい無防備になっているところがあります。むやみに野犬、野良猫、野生動物をなでたり、エサをやったりしないようにしましょう。
ワクチン接種をしましょう
狂犬病の流行地域に渡航する場合で、動物の接触が避けられない、または近くに医療機関がない地域に滞在する人は、渡航前にワクチンを接種しましょう。
  十分な免疫力を得るためには、4週間間隔で2回の皮下注射と、6~12ヶ月後の追加注射が必要
 
咬まれてしまったら…
狂犬病にかかっているおそれのある動物に咬まれてしまった場合、まず、直ちに十分に石けんを使って水洗いをします(傷口を口で吸い出したりしない)。その後、すぐに医療機関で傷口を治療し、ワクチン接種をします。発病前であれば、ワクチンの接種は効果があると考えられていますので、必ず接種してください(破傷風トキソイドワクチンを未接種の方は狂犬病ワクチンの接種と共に、破傷風トキソイドワクチンの接種も必ず受けてください)。事前に狂犬病の予防接種を受けている場合でも、狂犬病にかかっているおそれのある動物に咬まれた場合は治療を目的としたワクチン追加接種が必要となりますので、必ず医療機関を受診してください。また、現地医療機関での受診の有無にかかわらず、帰国時に検疫所(健康相談室)に御相談ください。
(問い合わせ先)外務省領事局政策課(海外医療情報)
 
おわりに
日本では狂犬病予防法に基づき輸入動物を検疫所で調べ、上陸を水際で防いでいます。しかし、近隣諸国で狂犬病が蔓延している事実を考えれば、いつ日本へ侵入するかわかりません。犬の飼い主さんは市町村に登録し、年に1回予防注射を受けることを心がけましょう。


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